洪水のつめあと。
平成17年7月23日〜24日
最近、台風や豪雨による被害が各地で相次いでいます。こと昨年(平成16年)は、7月に福井県の越美北線が、また10月には岐阜県の高山本線が、一部区間で線路が流され不通になってしまいました。いまだ不通のままのこれらの区間を訪れました。加えて、今年いっぱいで廃止が決まってしまった神岡鉄道にも乗りました。(神岡鉄道はその後、11月末に廃止が繰り上がりました。)
横浜から快速ムーンライトながらで西へ。早朝の岐阜駅で高山本線に乗り換えました。夜に雨が降ったのか、地面は濡れています。今日は列車よりバスがメインなので、あまり降ってほしくないのですが…。
今にも泣きそうな天気の中、列車は高山に向かいます。飛水峡は白く靄がかかり、雨こそ降っていないものの外は涼しそう。
下呂を過ぎ、高山に到着。列車が運行されているのは、この少し先の飛騨古川までで、接続列車で古川に向かいます。高山から17分で飛騨古川に到着、いつのまにか日が射していて、駅の外へ出てみると日なたはすっかり暑くなっていました。
ここから先、県境の猪谷までは、あちこちで路盤や橋梁が流され不通になっている区間。並行する国道を代行バスが走っています。駅前にはバスが2台いて、うち1台がその代行バスでした。発車まで20分、バスはまだ動きそうにないので、駅舎の陰や観光案内所で暑さを避けました。バスが乗場に移動したので行ってみると、乗客は他に2人だけ。最前部の座席に難なく座ることができました。
ガラガラのまま出発したバスは、しばらく市街地を進みます。バス停はたくさんありますが、このバスは列車代行なので、駅の近くに設けられた停留所にしか停まりません。2つめの飛騨細江で1人下車し、私とあと1人だけになってしまいました。
細江からは市街地を抜けて山間地へ入っていきます。富山へのメインルートは国道41号線ですが、バスはそこから逸れて高山本線の線路と並行する国道471号線・360号線を進みます。国道も高山本線も猪谷までずっと、神通川の支流の宮川沿いに通っています。
まず見えたのは、修復が進む鉄橋。橋桁には工事用シートがかかっていましたが、今にも列車がやってきそうな感じでした。それもそのはず、この先、角川までの区間は、この2ヵ月後の10月1日にほぼ1年ぶりに開通しました。が、この鉄橋を過ぎてすぐ、バスは仮設信号機で停まります。国道はとりあえず開通したものの、まだ道路半分が崩落したままで復旧工事中の場所がいくつもあるのでした。
しばらく進み次の角川に着くと、もう1人の乗客は降りてしまい、私だけになってしまいました。で、いちばん前に座っていたこともあり運転手さんに声をかけると、話好きな方だったようで、いろいろと話をすることができました。運転手仲間にも列車旅が好きな人がいるとか、ご本人は普段は別の路線バスを担当していてこの代行バスはあまり担当しないとか。列車の復旧について聞いてみると、やはりまだ数年はかかりそうかな、という答えでした。
と、車窓には流されてしまった橋梁が見えました。第9宮川橋梁。川には支柱だけが残り、線路は無惨にも下流方向へ引きちぎられて無惨な姿を晒しています。後で地図を見ると、川は蛇行してここだけ幅が狭くなっていて、大雨で増水した水流が一気に橋を押し流してしまったのかもしれません。
坂上駅前に到着。早着したようで、しばらく停車するよと言い残して運転手さんは開いていたお店に。私も下車して、坂上駅の駅舎に行ってみました。ギャラリーが併設されているこの駅は列車が来ないのが不思議なくらいきれいに保たれていましたが、ホームの入口には立入禁止のロープが張られ、線路は錆びていました。
運転手さんがバスに戻るのが見えたので私も戻り、再び国道360号線を進みます。途中、飛騨市巡回バスとすれ違いました。飛騨市は平成16年2月に、旧古川町、旧河合村、旧宮川村、旧神岡町が合併してできた市で、かなり広い範囲なため市内を一周する巡回バスが1日3便運行されています。ちなみにこのバスの運賃は1回100円と格安、だから今乗っている列車代行バスには乗ってこないのかな…と思ってみたり。
復旧工事のための仮設信号を何ヵ所も通り、重機の姿にも見慣れた頃、突然バスは立派な道路に出ました。真新しいトンネルが丘を貫いています。復旧工事が完了した区間で、さっきまでとは一転、とても運転しやすそう。一気にこんなに走りやすい道に生まれ変わるのだから地元も歓迎、と運転手さんは話してくれましたが、全ての区間で復旧するまでにはまだ相当な年数がかかるだろう、とも。真新しい道路はすぐに終わり、再びところどころ修復を続ける狭い道に戻ってしまいました。
車窓には再び流された橋梁が見えました。第6宮川橋梁。第9宮川橋梁と同様、線路が下流方向に折れ曲がり、流されていました。線路がただの鉄くずになってしまっています。ここから川は大きく蛇行し、線路はトンネルでショートカット、国道は川に沿って大きく円を描きます。再び線路と合流する地点に踏切がありましたが、ここは路盤がきれいになくなってしまっていました。そこからしばらくは線路と国道が並走しますが、線路がぐにゃりと曲がってしまっているのが見えます。と、ここにあった仮設信号機には工事の進捗率は13%、18年3月完成予定とありました。
打保を過ぎると、国道が通れないのか、バスは対岸の細い道路を進みます。工事のダンプカーなども同じ道路を通るので、対向車が来ると行き違いが大変そう。ここでは対岸に、路盤が流された線路が水面に落ちているのが見えました。桑谷川橋梁。路盤が流されたうえ、合流する小さな支流からは土砂が流れ込んで拍車をかけているようです。
バスは仮設道路や鋭角+急坂の曲がり角など、行程中もっとも運転しにくそうな場所を走っていきます。と、また、突然立派な道路に急変身。新しい広くて長いトンネルを抜けると、もう猪谷は目前でした。
定刻より10分早く猪谷駅前に到着。運転手さんにお礼を言いつつバスを降りました。
次に目指すのは、ここ猪谷から分岐する神岡鉄道です。この線は、かつての国鉄神岡線。神岡鉱山からの貨物輸送のおかげで生き延びてきましたが、その鉱山からの輸送がトラックに切り替わってしまい、とうとう年内いっぱいでの廃止が決まってしまいました。(注:その後廃止は11月末に繰り上がりました。)
終点に近い神岡鉱山前に車庫があり、神岡鉱山→奥飛騨温泉口→猪谷→奥飛騨温泉口→神岡鉱山という運用パターン。なので猪谷から列車だけで往復しようとすると、神岡での滞在が中途半端に長くなってしまいます。ましてこの時間帯の場合、列車で往復して戻ってくると、富山まで行くのがやっと。明日の目的地である福井までたどり着けません。が、全線が国道41号線に沿っており、ここを1日4往復、バスが通っています。7月から走り出した、富山から奥飛騨温泉郷への特急バスですが、ちょうどいい時間にあるので、これを利用することにしました。
なお時間が少しあるので駅前をお散歩。と、「猪谷関所館」を見つけ、資料を見て過ごしました。そして国道沿いに出て、バス停を探してみましたが見つからない…。ふと振り返ると、ちょうどバス停のポールが道ばたの木に隠れてしまっていました。見つかってよかったよかった。温泉地への特急バスに途中乗車、座れなかったらやだな…なんて思っていたら、やってきた中型バス、乗客は片手で数えられるほどでした。車窓を見ていると、この国道41号線は岐阜と富山を結ぶメインルートということもあってか、しっかりしたつくりになっていました。崖にはシェルターがつくられ、対向車はひっきりなしにやってきます。そして、目的である神岡鉄道の線路は、この道にぴったり並行しているのでした。バスの中とこの状況を見ると、みな自家用車を持っていて列車やバスには頼っていないのかな…。
神岡で下車。数人いた乗客はみなここで降りてしまいました。合併で飛騨市になりましたが、ここはかつての神岡町の中心地で、けっこうな町になっています。が、お昼を食べようと思っていたら、見かける食堂はお休みばかり。仕方がないのでコンビニでサンドイッチを仕入れました。
飛騨神岡駅が近そう。ということで町を行く人に聞いてみると「その道を入って上の方に駅があるよ」と。上に駅が? …行ってみると、なるほど、川とその両岸の家並みを跨ぐ高い鉄橋の上に駅がありました。道路からコンクリートの階段を登り、一段高いところに駅舎がありますが、一見へアーサロンにしか見えません。お店の脇の階段をさらに登り、ようやくホームに着きました。ホームは高い橋の上ですが、その両端はトンネルになっています。
この後の行程は、一旦終点の奥飛騨温泉口まで列車で行き、折返しの列車で猪谷へ戻るというもの。こんどの列車はひとつ前の神岡鉱山前始発です。ベンチには地元の工事の方かな?が2名すでに列車を待っていました。時刻が近づくと、トンネルから轟音が響いてきて、おくひだ2号と掲げられた車両がやってきました。車内はロングシートがボックス状に改造されていて、それぞれにテーブルがあるので5〜6人のグループならわいわい楽しめそう。奥飛騨温泉口側のボックスには、囲炉裡のレプリカがしつらえてあり、田舎の列車という雰囲気が味わえます。冷房はなく、窓全開で少々暑い…
乗ってしまえば、わずか2駅4分で終点の奥飛騨温泉口に到着。折返しの発車まで20分あり、駅前に出てみました。バス停はあるものの列車に接続するものはなさそう。駅前広場のまん中には貨物輸送全盛時に活躍していた機関車が鎮座していました。機関車を見て再び駅舎に戻るものの、することがない。列車にも待合室にも冷房がないし、暑い。ふと見ると、駅舎併設の喫茶店があります。で、ふらふらとそのお店「あすなろ」に吸い込まれ、アイスコーヒーでしばし涼をとりました。このお店、アイスコーヒー1杯でも豆からたててくれる、本格的なお店。おいしい!(でも発車時刻が迫ってきて少し焦っちゃいましたケド)
折返しの猪谷行は、レールファンと思しき人が数名。意外にも(失礼)途中駅からの乗車もありました。地元のご婦人でしたが、どうやらこの方もお別れ乗車のご様子。線路はその大半がトンネルの中なので、窓を開けていると涼しさを通り越して寒ささえ感じてしまいます。冷房なんて必要ないのでした。
ところでこの神岡鉄道、駅はJRと接続する猪谷を除くと全部で7つ。その全てに、七福神がお祭りされています。車内の案内をみて、七福神を写真に収めようとしましたが、駅によっては停車位置と離れていたりして、ほとんどまともに撮れませんでした。一旦降りると次の列車まで数時間ないこの線。停車駅を七福神に合わせて、停車時間を少しずつとってお参りできるようにするとか、イベントに生かせそうな気がしたのは私だけでしょうか。部外者の戯言とはわかっていますが…。
猪谷からは高山本線に乗継ぎ。ここから富山まではJR西日本の路線、車両はJR西日本の各地でみられるキハ120でした。2両編成で車内はガラガラですが、冷房つきなのがうれしい、と感じてしまいました。しばらくは神通川に沿って走りますが、笹津からは平地を走ります。いつのまにか乗客が増え、ドア近くに立つ人もでてきました。猪谷から48分、富山に到着です。
富山からは、富山港線を往復してから福井に向かうことも時間的には可能でしたが、宿に早めに入りたかったのでそのまま北陸本線の普通列車に乗継ぎました。けっこう混んでいて空席を見つけるのがやっとでしたが、徐々に空いてきて、県境の倶利伽羅あたりでは空いているボックスもありました。自宅ののりのりさんとメールのやりとりをしていましたが、突然「大きな地震があった!」とのメールを最後にぷっつり途切れてしまいました。しかしここは普通列車の中、情報源は何もありません。とりあえず携帯電話のサイトで首都圏の交通情報を見ようとしても、混雑してつながらない。中京地区ご在住のふれあく氏に連絡をとり、ようやく震度5クラスの地震があったことを知りました。これは大変、のりのりさんは、自宅は大丈夫か、予定を変えて金沢から特急で帰ろうか、等とひとり慌てていると、ようやくのりのりさんと連絡がとれました。自宅は無事、生活に全く支障無しと聞き、とりあえず安堵。余震も収まったとのことで、予定どおりそのまま福井に向かいました。
福井には18時半に到着。今夜は越前大野まで行きますが、到着が20時をまわるので、ここで夕食をとっておくことにします。駅構内のそば屋で一服し、生まれかわったえちぜん鉄道の駅をちらっと見てから、越美北線のディーゼルカーに乗り込みました。キハ120の単行ですが、けっこう乗っていて、座れませんでした。
福井から14分、越前東郷に到着。列車は1つ先の一乗谷まで行きますが、代行バスへはこの越前東郷で乗換えです。ここから先、美山までの間は、午前中に乗った高山本線と同様に水害で不通になったままの区間です。列車の半分以上の乗客が、駅前にいた列車代行バスに乗り込みました。いちばん前の席に座れましたが、もうまっ暗で景色は見えません。列車の駅にあわせて停車していきますが、駅ごとに人が降りていきます。
バスに揺られること20分、美山に到着。ここから先は再びディーゼルカーに乗換えです。まっ暗なホームで待っていた列車もキハ120の単行でしたが、こんどはじゅうぶん座りきれました。また駅ごとに人が降りていき、車内がさびしくなってきたところで越前大野に到着。
今夜の宿は「料理旅館三浦屋」。ですが到着が遅く出発が早いので、素泊まりです。料理旅館と銘打っているくらいなので、食べられないのがちと残念。風呂に入ったあと、すぐ床につきました。
( )は定刻 | 種別・列車名 | ||||||||
平成17年7月23日(土) | |||||||||
保土ヶ谷 | 1 | (0002→0006) | 10 | 横浜 | 久里浜 →品川 | 2304S 普通 | クハE216-2030 | 11/11両 | 1号車 |
横浜 | 6 | (0011→0641) | 6 | 岐阜 | 東京 →大垣 | 391M 快速ムーンライトながら | クハ372-7 | 1/9両 (名古屋から1/6) | 1号車 指定席 |
岐阜 | 4 | (0657→1009) | 1 | 高山 | 岐阜 →高山 | 4711C 普通 | キハ48 3816 | 2/2両 | |
高山 | 3 | (1014→1031) | 1 | 飛騨古川 | 高山 →飛騨古川 | 1825D 普通 | キハ48 5806 | 2/2両 | |
飛騨古川 | 駅前 | (1050→1230) | 駅前 | 猪谷 | 飛騨古川 →猪谷 | 5 代行バス | 濃飛バス 10022 | 1/1台 | |
猪谷 | . | (1250→1320) | . | 神岡 (林タバコ店) | JR富山駅前 →平湯温泉 | 濃飛バス 特急 | 1/1台 | ||
飛騨神岡 | . | (1353→1357) | . | 奥飛騨温泉口 | 神岡鉱山前 →奥飛騨温泉口 | 神岡鉄道223D 普通 | KM-151 おくひだ2号 | 1/1両 | |
奥飛騨温泉口 | . | (1418→1448) | 3 | 猪谷 | 奥飛騨温泉口 →猪谷 | 神岡鉄道208D 普通 | KM-151 おくひだ2号 | 1/1両 | |
猪谷 | 2 | (1504→1552) | 1 | 富山 | 猪谷 →富山 | 861D 普通 | キハ120 345 | 1/2両 | |
富山 | 4 | (1612→1711) | 3 | 金沢 | 黒部 →金沢 | 560M 普通 | クモハ413-5 | 3/3両 | |
金沢 | 5 | (1713→1835) | 4 | 福井 | 金沢 →敦賀 | 360M 普通 | クモハ475-47 | 3/3両 | |
福井 | 2 | (1902→1916) | . | 越前東郷 | 福井 →一乗谷 | 735D 普通 | キハ120 203 | 1/1両 | |
越前東郷 | 駅前 | (1921→1941) | 駅前 | 美山 | 越前東郷 →美山 | 735 代行バス | 西日本JRバス 531-6912 | 1/1台 | |
美山 | . | (1946→2006) | 2 | 越前大野 | 美山 →九頭竜湖 | 1735D 普通 | キハ120 201 | 1/1両 | |
料理旅館 三浦屋 |
2日めにつづく
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